「いたかつて、ごめんなさい」
そう言《い》つて美迦野《みかの》さんは、あまへたやうにしんなりとしなだれかヽつて
「まあおかあいそうに」
と言《い》つて、赤《あか》くなつた私《わたし》の手《て》を熱《あつ》い唇《くちびる》でひつたりと吸《す》ひました。布団《ふとん》を眼深《まぶか》か[#「眼深《まぶか》か」はママ]にかぶつた小鳩《こばと》のやうに臆病《をくびやう》な少年《せうねん》はおど/\しながらも、女《おんな》のするがまヽにまかせてゐた。
少年《せうねん》は女《おんな》の顔《かほ》をみあげるのさえはづかしかつた。



底本:「桜さく島 見知らぬ世界」洛陽堂
   1912(明治45)年4月24日発行
※近代デジタルライブラリー(http://kindai.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記を新字にあらためました。
※文中の「…」は底本では1文字あたり4点ないしは5点の点線ですが、文字の幅に合わせた「…」で代用しました。
※歴史的仮名遣いから外れた
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