選民のためのものであつたかといふ。
○
「子を持つて知る親の恩」かういふ言葉でも、恩といふ字を苦勞といふ字に置きかへて考へると、實に尤もだとおもふ。
○
「もう澤山だ」と思ひながら、明日になればまたその飯も食へば、苦勞のたねもつくる。
○
結局結婚は一番氣のりのしない相手ときまるものだ。近代には「しやくにさはるから結婚してやるのよ」と、そのしやくにさはる相手と結婚した娘さへある。
こんなことを書いてゐると、また夕刊の特種に若い社會記者の來訪をうけさうだが、遠路御足勞には及ばない。人間も年とるとだんだん過ぎ去つた事しかいへなくなる。
○
彼が彼女にまゐつてゐるといふことを、彼女が利用したからといつて、彼女に愛がないことを責めるのは、彼の方が無理だ。
○
娘よお前が求めてゐるものは一體何だ。さう訊かれて娘は答へることが出來ない。科學の必要なゆゑんだ。
○
我慢して熱い湯に入ることを自慢する男のやうに、自分の亭主の不品行を我慢してゐることを自慢する妻を警戒せねばならない。
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