いたり足袋を二足もつて外出するかはりに、道路の方の修繕を早く完全にする方が早道なのだが。
讀者諸孃の父兄達にもし東京の市會議員か復興局の役人がおいでだつたら、個人の不當の利益を少し我慢して、早く私達の歩く道をよくすることを提議して見てはどうだらう。
またまとまりがつかない文章になつたが、このつぎには「街の色彩と圖案」について少し考へてみることを約束してこの筆をおきませう。
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西京雜信
A君。
東京の方から偶々訪ねて來る朋友はきまつて「京都は面白いだらう」と聞く。私はまたきまつてかう答へた。「京都つて言ふところはお金をたんまり持つて旅人として遊びに來るには好い所だが、住むに好い所ぢあないね、やつぱり東京の方がどんな生活でも出來るし、長く住んだせゐか氣樂だよ」京都へ住むやうになつてから、彼是もう半歳になる。桓武天皇以來、長いこと天子樣のお膝下にゐた京都の町人はおそろしく卑屈になつてゐる。おかみの仰有ることには一も二もなく恐れ入つてしまふ。この反面に所謂官僚は電車の車掌も郵便配達も、文展側の畫工すらも、そりかへつて威勢を張つてゐる。
しかしA君。おもしろいこ
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