でいっておくれよ。花子さんが待ってるから」
「うるせえな、昼寝をしている方がよっぽど楽だからな」
そう言って、ぐうぐう眠ってしまいました。
そのとき、北山薪炭《きたやましんたん》の前へ、ちいさいちいさい、玩具《おもちゃ》の汽缶車が出て来ました。
「薪炭さん、さっきからお話をきいていると、お気の毒ですね。ぼくがひとつやって見ましょうか」
そう呼びかけられて、見ると、とても小さい汽缶車です。
「実際困っているんだが、君いってくれますか。だけど見かけたところ、君はずいぶんちいさいね。これだけのものをひっぱってゆけるかね」
「ぼくもわからないが、なあに一生懸命やって見るよ」
「じゃあ、ひとつやって貰《もら》おうか。おれたちもせいぜい軽くのっかるからね」
玩具の汽缶車は、三十俵の炭と、百束の薪とを引っ張って、停車場を出発しました。停車場の近所の平地《ひらち》を走るときは楽だったが、国境の山へかかると路《みち》は急になって、玩具の汽缶車は汗をだらだらながして、うんうん言っています。
「なんださか、こんなさか、なんださか、こんなさか」
元気の好《よ》いかけごえばかりで、汽缶車はなかなか進め
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