黒い車にのって来るといの」
「そうお。おばあさん、冬はなぜさむいの?」
「冬は北風にのって、銀の針をなげて通るからの」
「そうお。おばあさんは冬がお好き?」
「さればの、好きでもないし嫌いでもないわの。ただ寒いのにへいこうでの」
「そうお」
花子は、南の方の海に近い町に住んでいましたから、冬になると北の方の山国から、炭や薪《まき》をとりよせて、火鉢に火をいれたり、ストーブをたかねばならぬことを知っていました。おばあさんのために冬の用意をせねばならぬと、花子は考えました。そこで花子は薪と炭のとこへあてて手紙を書きました。
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ことしもまた冬がちかくなりました。おばあさんが寒がります。どうぞはやく来て下さいね。
花子
北山薪炭様
[#ここで字下げ終わり]
北山薪炭《きたやましんたん》は、花子の手紙を受取りました。
「そうだそうだ。もう冬だな、羽黒山に雪がおりたからな。花子さんのところへそろそろ行かずばなるまい」
北山薪炭はそう言って、山の炭焼小屋の中で、背のびをしました。
「どれ、ちょっくらいって
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