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太郎「だてふはいつも立《た》つてばかりゐますが、夜《よる》ねる時《とき》でも立《たつ》てますか」
動物園のおぢさん「夜《よる》はやつぱりしやがんで眠《ねむ》ります」
太郎「象《ざう》は立《た》つて眠《ね》るんでせう」
おぢさん「い※[#二の字点、1−2−22]へ象《ざう》もすわつて寝《ね》ます」
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かば

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太郎「おぢさん河馬《かば》は汚《きたな》いね※[#「江」のくずし字、コマ23−右−1]」
おぢさん「なぜさ」
太郎「だつて皮《かは》の穴《あな》からなんだか赤《あか》い汁《しる》が出《で》るんだもの」
おぢさん「でもあの汁《しる》がすきな鳥《とり》があるとさ。その鳥《とり》が来《く》ると河馬《かば》はじつとして、あの毛穴《けあな》の中《なか》の黴菌《ばいきん》を鳥《とり》がとつてくれるのをまつてゐるんだつてさ。それがその鳥《とり》の食物《しよくもつ》なのさ」
太郎「汚《きたな》い鳥《とり》だなあ、なんていふ名《な》」
おぢさん「知《し》らない」
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キバタン

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太郎「おまへは何処《どこ》から来《き》たの」
キバタン「印度《いんど》から来《き》ました」
太郎「印度《いんど》は黒坊《くろんぼ》ばかりゐるのかと思《おも》つたら、おまへのやうな白《しろ》い鳥《とり》もゐるのかい」
キバタン「なあに、昔《むかし》は黒《くろ》かつたんですが、あんまり太陽《たいやう》の光《ひかり》がきついもんですからはげてしまつたんです」
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とら

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動物園のおぢさん「ある時《とき》、白《しろ》い夏服《なつふく》を着《き》た巡査《じゆんさ》が、剣《けん》か何《なん》かでこの虎《とら》をおどかしたことがありました。それからといふもの白《しろ》い服《ふく》を着《き》た巡査《じゆんさ》が来《く》ると怒《おこ》ります」
太郎「おぢさん、虎《とら》はよく覚《おぼ》えてゐますね」
おぢさん「一度《いちど》そんなことがあると決《けつ》して忘《わす》れません」
太郎「虎《とら》が客《きやく》に向《むか》つて放尿《ほうねう》してもおまはり
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