め》ざまし
甘《あま》くて辛《から》くて酸《すつぱ》くて
きんぎよくれんのかくれんぼ
おつぺけぽうのきんらいらい」
観音《くわんのん》堂《だう》の境内《けいだい》は
のぞきからくり犬《いぬ》芝居《しばゐ》
「ものはためしぢやみてござれ
北海道で生捕《いけど》つた
一本《いつぽん》毛《け》のないももんがあ
絵《ゑ》看板《かんばん》にはうそはない
生きてゐなけりや銭《ぜに》やいらぬ」
「可哀《かあい》さうなはこの子でござい
因果はめぐる水車《みづぐるま》
一寸法師《いつすんほふし》の綱《つな》わたり
あれ千番《せんばん》に一番《いちばん》の
鐘《かね》がなろともお泣きやるな」
「やあれやれやれやれきたわいな
のぞきや八文《はちもん》天保銭《てんぽせん》
花のお江戸は八百八町《はつぴやくやちやう》
音《おと》にきこえた八百屋《やほや》の娘
年《とし》は十五《じふご》で丙午《ひのえうま》
そなたは十四《じふし》であらうがの
いえいえ十五《じふご》でござんする。
八百屋《やほや》お七《しち》がおしおきの
お眼《め》がとまれば千客様《せんきやくさま》」
[#改ページ]
郵便脚夫
「郵便《いうびん》ほい
おかみの御用でゑっさっさ」
郵便|脚夫《きやくふ》のうしろから
学校がへりの子供らは
ゑっさもっさとついてゆく。
「郵便ほい
おかみの御用でもっさっさ」
[#改ページ]
江戸見物
「江戸《えど》をみせよう」源六《げんろく》は
耳をつまんでつりあげた。
いたさこらへて東《ひがし》をみれど
どれが江戸やら山ばかり。
「なんとみえたであらうがな」
「みえはみえたが浅草《あさくさ》も
上野《うへの》もやつぱり山だらけ」
[#改丁、挿し絵入る、99]
[#改丁]
七つの桃
七人《しちにん》の
遊《あそび》仲間《なかま》のそのひとり
水におぼれてながれけむ。
お芥子《けし》の頭《かみ》が水《みづ》の面《も》に
うきつしづみつみえかくれ。
「よくも死人《しにん》をまねたり」と
白痴《ばか》の忠太《ちゆうた》は手をたたく。
水《みづ》にもぐりて菱《ひし》の実《み》を
とりにゆけるとおもひしが。
人《ひと》は家《いへ》より畑《はたけ》より
ただごとならぬけはひにて
はしりて河《かは》にあつまりぬ。
人のひとりは水にいり
人のひとりは小舟《こぶね》より
死骸《しがひ》を岸にだ
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