人の処女《をとめ》が列をはなれた。レヴコーはその処女を仔細に観察しはじめた。顔も着物も、すべて彼女は他の処女《をとめ》とおんなじだつた。ただその役割をいやいやつとめてゐることだけは明らかだつた。一同は長い列をなして、貪慾な敵の襲撃からすばやく身をかはしながら、あちらこちらへ逃げまはつた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]ああ、あたし、もう鴉はいや!※[#終わり二重括弧、1−2−55]疲れてがつかりして、その処女《をとめ》が言つた。※[#始め二重括弧、1−2−54]可哀さうなお母さん鳥の雛子《ひよつこ》をさらふなんて、むごいことよ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
『あれは妖女《ウェーヂマ》ぢやあない!』とレヴコーは心のうちで呟やいた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]誰が鴉になつて?※[#終わり二重括弧、1−2−55]
処女《をとめ》たちは又もや籤びきをしようとした。
※[#始め二重括弧、1−2−54]あたしが鴉になるわ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、一人の処女《をとめ》が申し出た。
レヴコーは注意ぶかくその処女《をとめ》の顔を眺めにかかつた。すばしこく、大胆に、
前へ
次へ
全74ページ中63ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
平井 肇 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング