と思つてやあがるんだらう? まるで総帥《ゲトマン》かなんぞのやうにおれたちを顎で指図しやあがる。奴隷のやうにこきつかふのはまだしも、おいらの娘つ子を口説きやあがるでねえか。恐らく村ぢゆうに、渋皮の剥《む》けた娘つ子で、あの村長に尻を追つかけまはされねえのは、一人もあるめえぜ。」
「それあ、まつたくだよ、まつたくだよ!」と若者たちは異口同音に喚きだした。
「なあ兄弟、おれたちは何も奴隷ぢやあるまい? 村長とおんなじ生れぢやあねえか? おいらたちは、これでも有難えことに自由の哥薩克だぜ! なあ兄弟、おれたちが自由の哥薩克だつてえ意気を奴に見せてやらうぢやねえか!」
「見せてやらうとも!」と、若者たちは叫んだ。「ところで村長といへば、あの助役も見逃しにやあ、出来ねえぜ!」
「助役だつて見逃すこつちやねえさ! そこで、おれの頭んなかにあ、村長をからかつた素敵な唄が、ちやんとお誂らへむきに出来あがつてるんだ。さあ行かう、そいつをみんなに教へてやるよ。」かう、レヴコーはバンドゥーラの絃を手で掻き鳴らしながらつづけた。「それからなあみんな、めいめい思ひ思ひに変装をして呉んねえか!」
「さあさ、哥薩克
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