しに、その場へ投げ出された。
「さやうなら、お寐み、ハンナ!」さう、口々に叫びながら、幾人もの若者が村長の頸つたまにぶらさがつた。
「退《ど》きやあがれ、この忌々しいきちがひどもめ!」と、村長は体を振りほどきざま、若者たちに足蹴を喰らはせながら怒鳴つた。「このおれが、汝《うぬ》たちにやあ、ハンナに見えるのかつ! この悪魔の忰どもめが、親爺の跡を追つて絞首台《くびしめだい》へあがる支度でもさらすがええ! 蜜にたかる蠅かなんぞのやうに、うじやうじやと喰らひつきやあがつて! ハンナなんぞ、幾人《いくたり》でも呉れてやるわい!……」
「村長だ! 村長だ! こいつあ村長だぞ!」さう叫び出すなり、若者たちは四方八方へ逃げ散つた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]飛んでもない親爺だ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]やつと驚愕から我れに返つたレヴコーは、悪態をつきつき立ち去つてゆく村長の後ろ姿を見送りながら、かう呟やいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]なんといふ巫山戯た真似をする親爺だらう! まつたく呆れたもんだ! なるほど、さういへば、あのことを持ち出すたんびに、奴さんが聞いて聞かぬ振りを
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