らしいピローグだか、ひとつお眼にかけたいくらゐで、いや砂糖、まるつきり砂糖のやうでな! そいつを頬ばりだすと、もうバタが唇《くち》をつたつてたらたらと流れだす始末。まつたく考へて見るに婦女子《をなご》どもといふやつは何から何まで実に器用なものぢや! いつか皆さんは茨《いばら》の実を入れた梨の濁麦酒《クワス》だの、乾葡萄や黒梅の入つた混成酒《ワレヌーハ》を召しあがつたことがおありかな? それとも、牛乳《ちち》いりの雑炊《プートリャ》を召しあがつたことがおありかな? いやはや、この世の中にはなんと夥しく、いろんな食べ物がありますことぢやらう! つまみにかかつたが最後、腹いつぱい、しこたま詰めこまずにはゐられませんわい。美味《うま》いものあさりといふやつは、実になんともいひやうのないものでしてな! 去年のことぢやが……。いや、それはさて、わたしとしたことが、何をしやべりこけてしまつたことやら? つまるところは、ただお出かけになつてさへ下さればよろしいので、一刻《いつとき》もはやくおいでになつてさへ頂けばな、さうすれば、もう、逢ふ人見る人ごとに、いちいち吹聴なさらずにはゐられないほどの素晴らし
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