ィカーニカの地名《ところな》を本の標題に置いたやうな次第でな。ディカーニカといへば、もう百も御承知のことであらう。それあもうその筈で、あすこぢやあ、家屋《いえ》だつて蜜蜂飼風情の小舎などとはずんときれいで、果樹園ときたら、いやどうも、あなた方の彼得堡《ペテルブルグ》にだつて、あれだけのものはちよつとやそつとには見当りますまいからね。それで、ディカーニカまでおいでになつたら、穢ならしいシャツ一枚で鵞鳥の番をしてをる出あひ頭の小僧つ児に、※[#始め二重括弧、1−2−54]蜜蜂飼のルードゥイ・パニコーの家は何処だい?※[#終わり二重括弧、1−2−55]とお訊ね下され。さうすれば、※[#始め二重括弧、1−2−54]あすこだよ※[#終わり二重括弧、1−2−55]と言つて、その小僧つ児が指をさしてすぐにお教へするでせう。もしお望みとあれば当のこの部落《むら》まで、先きに立つて御案内することでせう。※[#「にんべん+且」、24−15]しお断わりしておかねばならないのは、後ろ手なんぞ拱んで、いはゆる容態ぶつた歩き方などなさるのは、見合はせて頂きたいことで、といふのは、こちらの村道といふやつが、あなた方
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