に、槍を向けるとは口惜しや!……あな、兄弟《はらから》よ、我が友よ! 宿世の縁とあるからは、たとへこの身はその槍の、錆と消えんも詮なけれ。されど童子は助けてたべ、いかでか無辜の幼な児に、さる非道なる最期をば、遂げしめるべき罪科《とが》あらん。※[#終わり二重括弧、1−2−55]されどペトゥローはあざ笑ひ、槍ひきしごきイワンをば、ただ一と突きに突きければ、哥薩克と稚児は翻筋斗うち、奈落の底へと転落せり。ペトゥローはすべての財宝を、わが身ひとりで横領なし、総督《パシャ》の如くに暮しけり。ペトゥローの牧場に見る如き、馬群を持つ者さらになく、緬羊《ひつじ》の類も誰にもまし、数おびただしく飼ひゐたり。かくしてペトゥローは世を去りぬ。
☆
『ペトゥロー死すや上帝は、彼とイワンの霊魂を裁きの廷に招《め》し給ひ、※[#始め二重括弧、1−2−54]さてもこれなる人間《ひとのこ》は類ひ稀なる悪人なり。われは直ちに刑罰を、決せざればイワーニェよ! 汝みづから彼がため、欲《ねが》ひの刑を選ぶべし!※[#終わり二重括弧、1−2−55]かく宣まへばやや暫し、イワンは刑を打ち案じ、思案にくれてゐたり
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