て、※[#始め二重括弧、1−2−54]なあ、コプリャーン、若し神の御心で俺がこの世に亡き者となつた暁には、俺の女房をつれて行つて、自分の妻にするがよい……※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、そんなことまで言つたと物語つた。
 カテリーナの両の眼は鋭く、客の顔を突き刺すやうにそそがれた。「あつ!」と彼女は叫んだ。「これは彼奴《あいつ》だ! お父さんだ!」そして短刀を閃めかしながら客に躍りかかつて行つた。
 暫しのあひだ、その男はカテリーナの手から短刀を※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]ぎ取らうとして争つたが、つひに奪ひ取ると共に、それを振りあげざま、無残なことをして退けた、父親が気の狂つた我が娘を刺し殺してしまつたのだ。
 仰天して哥薩克たちが一斉に飛びかかつて行かうとしたが、矢庭に駒の背に跨がつた魔法使は一目散に雲を霞と逃げ去せてしまつた。

      十四

 キエフの郊外に前代未聞の奇蹟が現はれた。貴族や哥薩克の隊長たちが駈けつけて、その不思議な現象に驚異の眼を瞠つた――といふのは、突然、遠く世界の端々までが手に取るやうに見え出したのである。遥かに*リマーンの砂洲
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