の坊やを浚つていくだらうから。あの大尉はなんて頓馬な人だらうねえ、彼《あのひと》は、あたしがこのキエフで面白い日々を送つてゐると思つてるんだわ。どうして面白いものか、うちのひとや坊やまでこつちへ来てゐて、誰が留守番をするのさ? あたし、そうつと、猫や犬にも気がつかぬくらゐ静かに出て来たんだよ。婆や、お前、若くなりたくはないかい? ちつとも難かしいことぢやないよ、ただね、踊りさへすればいいのさ。そら御覧よ、あたしが踊るから……。」カテリーナはこんなたわいもないことを口走ると、四方八方へ愚かしいまなざしを配りながら、腰に手をつがへて、もう踊りだした。甲高い声で唄を口ずさみながら、彼女はステップをふんだ。韻律もなく調子はづれに銀の踵鉄《そこがね》が鳴つた。編目《くみめ》の解けた黒髪が白い顔にパラパラと落ちかかつた。彼女は舞ひながら、まるで鳥のやうに小止みもなく手を振り、頭を揺つて、さながら力尽きて地上にばつたり倒れさうになるかと思へば、また下界から飛び去つてしまひさうにも見える。
憂はしげにたたずんだ、年老いた乳母の深い頬の皺には、涙が溢れてゐた。忠実な郎党どもも、この女主人の狂態を眺めて
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