衣嚢《かくし》の金貨をはたき出す。山と山とのあひだには大きな盆地や湖がある。その湖はさながら玻璃板の如く微動だにせず、鏡のやうに、丸禿の山顛や緑の森を映してゐる。
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レンベルグ 墺太利領(現在は波蘭領)ガリシヤの首都。
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だが、この夜更に――星が輝やいてゐても、ゐなくても――恐ろしく巨大な黒馬の背に跨がつて歩を進めてゆくのは何者だらう! 途方もなく脊の高い騎士が、山の麓や湖の岸を、その巨大な馬と共に微動だにせぬ水面に影像を落しながら馳ける時、果しなく大きな陰影がおどろおどろしく山々を翳してゆく。鋳鉄《てつ》の小板《こざね》がキラキラと閃めき、長劔が鞍にあたつて音を立てる。兜が揺れあがり、口髭は黒ずみ、両眼は瞑られて、睫毛が伏さつてゐる――彼はまどろんだまま、夢うつつで手綱を握つてゐるのだ。そのうしろから、同じ馬の背に跨がつた一人の稚児が、やはり眠りながら、夢中に騎士の腰にしがみついてゐる。一体これは何者で、どこへ、何のために馬を進めてゐるのだらう? それを知る者はない。彼は既に一日ならず二日ならず、山また山を越えて進ん
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