加特力僧《クションヅ》もひとり混つてゐるが、その風体が皆と同じで、正教の祭司などとはまるで似ても似つかず、一同とともに酒を呑み、浮かれ騒いで、その穢れた舌で淫らがましいことを喋り散らしてゐる。首領たちも奴僕と何ら選ぶところなく、破れた波蘭服《ジュパーン》の袖を後ろへ撥ね、あつぱれ剛の者を気取つて、さも分別顔に濶歩してゐる。骨牌を弄んでは、骨牌で鼻を打ち合ひ、ひとの女房は勝手に連れ込む。金切声、罵り合ひ!……首領どもはあらゆる狂態を演じ、いたづらの限りを尽して、猶太人の頤鬚を引つぱつたり、その異教徒の額に十字を描いたり、女たちに空砲を射ちかけたり、くだんの生臭坊主を相手に*クラコ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ャークを踊つたりしてゐる。未だかつて露西亜の国土にかくの如き汚辱を加へたものは、韃靼人にすらなかつた。恐らくは神が罪障を罰するため、かくの如き汚辱を忍ぶべく定め給うたのであらう! がやがや騒ぐ人声の中から、ドニェープルの対岸なるダニーロの屋敷や、その美しい妻の取沙汰をしてゐる話声が聞える……。かうした徒党の集まつたのは、いづれ善からぬ企らみがあつてのことに違ひない!
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