て!」
「カテリーナ!」と、ダニーロは、けはしく叫んだ。「俺がさういふことを好かぬことは、お前も知つてをる筈だ。女は女だけのつとめを弁へてをればよい!」
劔と劔とが物凄く鳴り響き、鉄と鉄とが切り結ばれて、二人の哥薩克は飛沫《しぶき》のやうな火花を身に浴びた。カテリーナは泣き泣き離舎《はなれや》へ逃れると、寝台へ身を投げて、切り結ぶ刄音を聞くまいとして耳を蔽うた。しかし、哥薩克同士の目ざましい渡りあひの物音は打ち消すべくもなかつた。彼女の胸は千々に砕け、カチあふ刄音に五体が顫いた。※[#始め二重括弧、1−2−54]いいえ、もうもう我慢が出来ない……ひよつとしたら、もう白い肌から紅い血潮がふき出してゐるかもしれないのに、どうして、こんな処でうつぷしてなどゐられよう!※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう呟やいて、真蒼になつた彼女は息せき切つて母屋へ走り込んだ。
二人の哥薩克は何れ劣らず、烈しく切り結んでゐた。どちらに優り劣りがあるでもなかつた。カテリーナの父親が打ち込むと見るや、ダニーロは身をかはし、ダニーロが攻勢に出るや、形相すさまじい舅は後|退《ずさ》りをして、再び互格に返る。双
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