から何まで、はては日常の夫婦喧嘩の末に至るまで干渉を望む手合の一人であったらしい。それについで……だがここで、またもやこの事件は迷宮に入ってしまい、この先それがどうなったかは、まるでわからないのである。

      三

 この世の中にはじつに馬鹿馬鹿しいこともあればあるものだ。時にはまるで嘘みたいなこともあって、かつては五等官の制服で馬車を乗り迴し、あれほど市《まち》じゅうを騒がせた当の鼻が、まるで何事もなかったように、突如としてまた元の場所に、つまりコワリョーフ少佐の頬と頬のあいだに姿を現わしたのである。それは四月も七日のことであった。眼をさまして、何気なく鏡をのぞくと鼻があるのだ! 手でさわって見たが――正しく鼻がある! 【うわっ!】と声をあげたコワリョーフは、喜びのあまり部屋じゅうを跣足《はだし》のままで飛びまわろうとしたが、ちょうどそこへイワンが入って来たため妨げられてしまった。早速、洗面の用意をさせて、顔を洗いながら、もう一度鏡をのぞくと――鼻がある! タオルで顔を拭きながら、またもや鏡を見ると――鼻がある!
「おいイワン、ちょっと見てくれ、俺の鼻ににきびができたようだが
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