がありますかね? 御覧のとおりですから、どうしても掲載していただかねばなりません。ほんとに恩にきますよ。それに、こんな御縁でお近づきになれて、大変うれしいんです。」少佐は、この言葉でもわかるとおり、今度は少しおべっかを使う気になったのである。
「掲載するのは、無論、何でもありませんがね、」と係員は言った。「しかし、そんなことをなすっても、何のお利益《ため》にもなるまいと思いましてね。それよりも、いっそ、筆のたつ人に頼んで、この前代未聞の自然現象《できごと》を文章に綴って、それを【*北方の蜂】にでもお載せになったら、(と、ここでまた彼は嗅ぎ煙草を一服やって、)それこそ若い者の教訓《ため》にもなり、(そう言って、今度は鼻をこすった。)また大衆にも喜ばれることでしょうから。」
八等官はがっかりしてしまった。彼が新聞の下の方の欄へ、ふと目をおとすと、そこに芝居の広告が出ていて、美人として評判の、さる女優の名前に出っ喰わしたので、すんでのことに彼の顔はほころびかかり、その手は*青紙幣《あおざつ》の持ち合せがあったかどうかと、かくしの中をまさぐっていた。というのは、コワリョーフの考えによれば、お
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