、なんでもない、内證、内證! と。――『蜂《プチエラ》』を讀む。佛蘭西人つて奴は何といふ馬鹿だらう! いつたい何をたくらんでるのだらう? 皆んなひつからげて、笞でぴしぴしひつぱたいてくれるといいんだ! やはりその雜誌で大變面白い舞踏會の記事を讀んだが、何でもクールスカヤ縣の地主の書いたものだつた。クールスカヤ縣の地主連はなかなか味な文章を書きをる。その後でふと氣がつくと、もう十二時半を打つてゐたが、閣下は未だに寢室からお出ましにならない。ところが、一時半ごろ、とても筆紙にはつくし難い大事件が持ちあがつた。扉がぱつと開いたので、そら局長だとばかりに、おれは書類を持つて椅子から跳びあがつたが、それがあの方なんだ、御令孃なのさ! いや、どうも、その服裝のあでやかさといつたら! お召物はまるで白鳥のやうに眞白なやつで――ふう、そのきらびやかさといつたら! こちらをちらと御覽になつた時には――まるで太陽に射られたやうに眩《まぶ》しかつた! まつたく太陽に射られたやうにさ! お孃さんはちよつと會釋を遊ばされて、『あの、父《パパ》はこちらにをりませんでして?』と仰つしやる。いやはや、どうも! 玉をこ
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