て、あの男はどうしたろう、どんな様子だろう、また実際、何とか彼を援助してやれないものだろうかと、それを知るために下役を出むかせたほどである。が、やがてアカーキイ・アカーキエウィッチが熱病で急逝したという報告がもたらされると、彼はがく然として驚き、良心の苛責を感じて、終日怏々として楽しまなかったほどである。彼は少しでも心をまぎらして不快な印象を免れたいものと考えて、ある友人の家の夜会へ出かけていったが、そこには相当の人数が集まっており、なおさいわいなことに、それがいずれもほとんど自分と同等の身分の者ばかりであったので、彼は少しも固苦しい思いをする必要がなかった。そのことが彼の精神状態に驚ろくべき作用をあたえた。彼は打ちくつろぎ、気持よく談笑して、にこにこと愛想もよかった――一言にしていえば、一夕を非常に愉快に過したのである。晩餐の席ではシャンパンを二杯傾けたが、これは周知の通り上機嫌になるには持って来いの薬である。このシャンパンが彼にいろんな突飛な気分を沸き立たせた。そこで彼は、まだ家へは真直に帰らないで、かねて馴染《なじみ》の婦人のところへ立寄ろうと肚をきめたのである。それはどうやらド
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