めつ彼の外套の品さだめをした。アカーキイ・アカーキエウィッチはいささかてれはしたものの、根が正直な人間だけに、みんなが自分の外套をほめちぎるのを眺めては、どうしても喜ばずにはいられなかった。しかし当然のことではあるが、一同の者は間もなく彼も外套もうっちゃっておいて、例のごとくヴィストのために定められたテーブルへ戻ってしまった。すべてこれらのもの――騒音や、話し声や、人々の群れが、アカーキイ・アカーキエウィッチにはなんとなく奇態なものに思われた。彼はいったいどうしたらいいのか、自分の手足や五体のすべてをどこへ置いたらいいのか、さっぱり見当がつかなかった。それでもとうとうしまいに、勝負をしている人々の傍らへ腰をおろすと、カルタを眺めたり、あちこちの人の顔をのぞきこんだりしていたが、しばらくすると、あくびがでて、退屈を感じはじめた。それにいつもなら、もうとっくに床に就く時刻なので、なおさらのことであった。彼は主人に暇《いとま》を告げて帰ろうと思ったが、みんなは是が非でも新調祝いにシャンパンの杯を挙げなければならないからといって、いっかな放そうとはしなかった。一時間ばかりして、野菜サラダと仔牛
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