らしいピローグだか、ひとつお眼にかけたいくらゐで、いや砂糖、まるつきり砂糖のやうでな! そいつを頬ばりだすと、もうバタが唇《くち》をつたつてたらたらと流れだす始末。まつたく考へて見るに婦女子《をなご》どもといふやつは何から何まで実に器用なものぢや! いつか皆さんは茨《いばら》の実を入れた梨の濁麦酒《クワス》だの、乾葡萄や黒梅の入つた混成酒《ワレヌーハ》を召しあがつたことがおありかな? それとも、牛乳《ちち》いりの雑炊《プートリャ》を召しあがつたことがおありかな? いやはや、この世の中にはなんと夥しく、いろんな食べ物がありますことぢやらう! つまみにかかつたが最後、腹いつぱい、しこたま詰めこまずにはゐられませんわい。美味《うま》いものあさりといふやつは、実になんともいひやうのないものでしてな! 去年のことぢやが……。いや、それはさて、わたしとしたことが、何をしやべりこけてしまつたことやら? つまるところは、ただお出かけになつてさへ下さればよろしいので、一刻《いつとき》もはやくおいでになつてさへ頂けばな、さうすれば、もう、逢ふ人見る人ごとに、いちいち吹聴なさらずにはゐられないほどの素晴らしい御馳走をして進ぜまするよ。恐惶謹言
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ピローグ パイに似た露西亜独特の菓子。
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[#地から3字上げ]蜜蜂飼 ルードゥイ・パニコー
[#地から1字上げ]しるす



底本:「ディカーニカ近郷夜話 前篇」岩波文庫、岩波書店
   1937(昭和12)年7月30日第1刷発行
   1994(平成6)年10月6日第8刷発行
※「旧字、旧仮名で書かれた作品を、現代表記にあらためる際の作業指針」に基づいて、底本の表記をあらためました。
※底本の中扉には「ディカーニカ近郷夜話 前篇」の表記の左下に「蜜蜂飼ルードゥイ・パニコー著はすところの物語集」と小書きされています。
※「*」は訳注記号です。底本では、直後の文字の右横に、ルビのように付いています。
入力:oterudon
校正:伊藤時也
2009年8月6日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
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