てをり、他方には藁小屋があるのだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]うん、鋤を持つて来たのは、もつけの仕合せぢやつたわい。そら、あそこに小径があるぞ! ほら、塚もある! あそこに木の枝が載つとるぞ! それ、それ、火がとぼつとるぢやないか! どうか間違へまいもんぢやぞ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 彼は鋤を振りあげて、まるで瓜畑へ闖入した野豚に一撃を喰はせようとでもするやうに、こつそり走り寄つて、塚の前で立ちどまつた。火は消えて、塚の上には草に蔽はれた石が一つあるだけだ。※[#始め二重括弧、1−2−54]この石を持ちあげにやならんて!※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう考へた祖父は、四方からその石のまはりを掘りはじめた。それがまた、恐ろしく大きな石だ! しかし、うんと足を地面に突つ張つてそれを塚から押しこかした。と、その石はごろごろつと音を立てて谷底へ落ちて行つた。※[#始め二重括弧、1−2−54]そこがお主の行くところだよ! さあ、これで仕事が楽になつたわい。※[#終わり二重括弧、1−2−55]
 ここで祖父は手を休めて、嗅煙草入を取り出すと、拳の上へ煙草をばら撒いて、今
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