ほど、その顔に、脂汗がにじみ出して来るのであつた。
いつもより早目に彼は寝床へ入つたが、どんなに眠らうとしても、寐つくことが出来なかつた。しかし、やがてのことに、待ちに待つた、あの万人に共通な慰藉である睡魔が彼を訪れた。だが何といふ奇妙な夢を見たことだらう! 彼は未だかつてこれほど辻褄の合はぬ夢を見たことがなかつた。見ると、ぐるりがガヤガヤとざはめき、グルグル※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてをり、彼自身は力かぎり根かぎり一散に駈けてゐるのだ……。ところが、もうどうにも根がつづかなくなつてしまふ。と、突然、誰かが彼の耳をつかまへる。※[#始め二重括弧、1−2−54]おい、誰だ?※[#終わり二重括弧、1−2−55]――※[#始め二重括弧、1−2−54]あたしよ、あなたの妻よ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]さういふ声がざはめきの中から彼に答へた。そして不意に彼は夢から覚めた。と、今度はもう彼は妻帯してゐるのだが、彼等の家の中は実に奇妙なのだ。彼の部屋には一人用の寝台ではなく二人用の寝台があつて、椅子には妻がかけてゐる。彼には実に変てこで、どうして妻の傍へ行つたものか、何
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