き取ることが出来なかつた。
「それでは一つお目にかけませうかな?」さう言つて、老主婦は立ちあがつた。
それに次いで令嬢たちとワシリーサ・カシュパーロヴナが座を立つた。そして一同は女中部屋をさしてぞろぞろと歩き出した。だが、叔母さんはイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチに、後に残るやうにと目くばせをして、老婆に何やら小声で囁やいた。
すると老婆は金髪の令嬢の方を振り返つて、かう言つた。
「マーシェンカ! お前はお客さまと御一緒に此処に待つておいで、そしてお退屈だらうから何かお話のお相手でもしていらつしやい!」
金髪の令嬢は客間に残つて、長椅子に坐つた。イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは、さながら針の蓆に坐る思ひで椅子に就くと、まつ赤になつて眼を伏せた。しかし令嬢は、まるでそんなことは気にも止めないもののやうに、すました顔をして、長椅子に腰かけたまま、しきりに窓や壁を眺めたり、椅子の下をコソコソ駈け抜ける仔猫を見やつたりしてゐた。
イワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチはやや勇気を取り戻して、何か話しかけよう
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