字下げ終わり]
[#ここから4字下げ、折り返して5字下げ]
ブラーガ 白色を帯び、ビールに似た、下等な酒精飲料。又、ビール醸造用の麦芽汁の醗酵したものもブラーガと呼ぶ。
[#ここで字下げ終わり]

 つひに、中尉に昇進して退職の許可を得たイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは、*マギリョーフからガデャーチまで四十|留《ルーブリ》の約束で猶太人の馭者を傭つて、幌馬車の中に座を占めた。時あたかも樹々の小枝に新緑の若葉もなほ疎らに、大地のすべてが鮮やかにすがすがしい青草に蔽はれ初め、野辺の到る処に春の息吹の感じられる頃であつた。
[#ここから4字下げ、折り返して5字下げ]
マギリョーフ マギリョフスカヤ県の首都。ドニェープルに臨んだ河港。
[#ここで字下げ終わり]

    二 道中

 道中には、さして目覚しい出来ごともなかつた。彼はもう二週間あまり旅をつづけてゐた。恐らく、それよりずつと前にイワン・フョードロ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]ッチは村へ帰り著いてゐた筈であるが、信心ぶかい馭者の猶太人が土曜日ごとに安息日を守り、馬衣に身を包《くる》んで、一日ぢゆ
前へ 次へ
全71ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ゴーゴリ ニコライ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング