」はママ]長い。そろそろと彼は両手をさしあげた。と、彼の顔ぢゆうがぶるぶる顫へ出して、醜くひん曲つた。おそろしい苦痛を堪へ忍んでゐるらしい様子だ。※[#始め二重括弧、1−2−54]ああ息苦《くる》しい、息苦《くる》しい!※[#終わり二重括弧、1−2−55]さう、彼は人間らしくない奇怪な声で呻いた。その声は刃《やいば》のやうに人の胸を貫いた。が、不意に死人は地の下へ消え失せてしまつた。すると次ぎの十字架がゆらゆらと揺れだして、前のより、もつと怖ろしく、もつと背の高い死人が現はれた。全身が毛だらけで、頤鬚は膝までもとどき、骨のやうな爪は前のより更に長くのびてゐた。彼は一際もの凄い声で※[#始め二重括弧、1−2−54]息苦《くる》しい!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と叫ぶと、地下へ戻つて行つた。三番目の十字架が揺れ出して、三人目の死人が立ちあがつた。それはまるで骸骨だけが地上たかく突つ立つたもののやうに見えた。頤鬚は踵までもとどき、長く伸びた指の爪はまだ地中へ突きささつてゐた。彼はさながら月を掴まうとでもするやうに、怖ろしい勢ひで両手を高く差し上げると、その黄ばんだ骨を挽き切られでもす
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