ので?」と、しよげ返つた悪魔がたづねた。
「彼得堡《ペテルブルグ》へだ、まつすぐに女帝陛下のところへ!」さういつた瞬間に、鍛冶屋は自分のからだが空中へ舞ひ上つて行くのを感じたが、怖ろしさのあまり、ぼうつと気を失つてしまつた。

        *        *        *

 暫らくの間オクサーナは、鍛冶屋の言ひおいて行つた変な言葉にとつおいつ心を悩まして、たたずんでゐた。彼女は心の中で、何とはなしに、余りに自分が彼につれない仕打ちをしてゐたやうに思つた。※[#始め二重括弧、1−2−54]もしや彼《あのひと》はほんとに何か怖ろしい覚悟をしたんぢやないかしら! 分りやしないわ! どんなことで、自棄《やけ》から他の女《ひと》を想ふやうになつて、面《つら》あてにでもその女《ひと》を村一番の美人だなんて言ひ出さないにも限らないわ! でも、そんなことはないわ、彼《あのひと》はあたしを愛してるんだから。あたしはこんなに美しいんだもの! 彼《あのひと》がどんなものにだつて、このあたしを見返るなんてことはないわ。彼《あのひと》は冗談にあんな真似をしてゐるだけなのよ。十分も経たないうちに、屹度
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