言つた。「あんたが、あたしの足にはけるやうな靴を何処で手に入れるか、ひとつ見てゐてあげるわ。ふん、あんたが女帝のおはきになる靴でも持つて来てくれたらねえ。」
「まあ、ずゐぶん注文が大きいのね!」と、娘たちの群れが笑ひながら叫んだ。
「ええ、さうよ!」と美女は誇りかに語を継いだ。「ね、皆さん、証人になつて頂戴な。もし鍛冶屋のワクーラさんが女帝のおはきになる靴を持つて来て呉れたら、あたし屹度、その場でこの人のお嫁になることよ。」
 娘たちは、このやんちやな美女を伴つて出かけて行つてしまつた。
※[#始め二重括弧、1−2−54]笑へ! 笑へ!※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、一同の後から外へ出ながら鍛冶屋はつぶやいた。※[#始め二重括弧、1−2−54]おれは自分で自分を笑つてるんだ! 考へれば考へるほど、おれの頭はまつたくどうかしてゐる。あいつはおれを好いてゐないんだが――ままよ、勝手にしやがれだ! 女といへばまるで世界ぢゆうにオクサーナよりほかにはないとでもいふのかい。あの女でなくつたつて、お蔭さまなことに、村にやあ好い娘《こ》が、ざらにあらあな。オクサーナがなんだい? あんな女は主
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