ゐるのだ。※[#終わり二重括弧、1−2−55]
「あんたとこのお母《つか》さん、妖女《ウエーヂマ》だつてほんと?」さう言つて、オクサーナが笑ひだした。すると鍛冶屋も肚のなかからほほ笑まれて来るやうに感じた。その笑ひが心臓に反応し、微かに波だつ血管へと伝はつた。それについで、このやうな気持の好い笑ひを浮かべた顔を、存分に接吻することの出来ない口惜しさが彼の心をとざした。
「阿母《おふくろ》なんかどうだつていいさ。おれにとつてはお前が阿母《おふくろ》でもあれば、親父《おやぢ》でもあり、この世の中にある限りの大事なものだもの。もしも皇帝《ツァーリ》がおれを呼び出して※[#始め二重括弧、1−2−54]鍛冶屋のワクーラ、そちにとつてこの国ぢゆうでいちばん貴重なものを言つて見よ、何でも望みのものをそちに遣はすから。そちのために黄金《こがね》の鍛冶場を建てて取らせようか、そして銀の鎚で鉄を鍛へさせて遣はさうか?※[#終わり二重括弧、1−2−55]と仰せられたとしても、おれは、※[#始め二重括弧、1−2−54]そのやうな望みはござりませぬ。※[#終わり二重括弧、1−2−55]と皇帝《ツァーリ》にお答へ
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