あたしの肺炎が快くなりかけて、はじめてあの煙突から煙の出ているのを見付けて笑った時、あの人は泣いていたわ……けれども、もう、みんな……みんな……台なしだわ!……でも、若しあの人が何時迄もあの赤い小いさな煙突の下に住んでいてくれたなら、あの煙突はまるで最初から飾物でなぞなかったような顔をして、毎日々々煙を吐きつづけたかも知れなかったのに……」
それから彼女はその手紙を幾つにも幾つにも細かく引き裂きはじめたのであった。……
底本:「アンドロギュノスの裔」薔薇十字社
1970(昭和45)年9月1日初版発行
入力:森下祐行
校正:もりみつじゅんじ
2001年11月16日公開
2002年1月24日修正
青空文庫作成ファイル:
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