嘘
渡辺温
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)遉《さすが》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|お河童《ボップドヘヤ》で
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)え、君が※[#疑問符感嘆符、1−8−77]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すた/\と
−−
雪降りで退屈で古風な晩であった。
井深君の邸に落ち合った友達が五六人火のそばに寄って、嘘吐き――話の話しくらべをした。自分の素晴しい嘘で人を担いだ話や、またはそのあべこべのしくじり話やらをめいめいが語った。
そしてさて、主人の井深君の番になった。井深君は、誰よりも一番多くその生れ付きの中に小説家的な要素をもっていたばかりではなく、日頃の生活も当り前の様式とは少からず異っていたので(――それらの点はこの話を聞くだけでも直ぐ察せられる事なのだが)誰も斉しく井深君の番になるのを待ち構えていたのだった。
――偽瞞こそあらゆる芸術の本体だ、と誰か
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