来たので一人で腹をかゝへた事であつた。此の話しを北朗にして聞かせたら、北朗その時の云ひ草に[#「云ひ草に」に傍点]曰く、人間が予定[#「予定」に傍点]と云ふもので行動すると身体をいためるネ[#「いためるネ」に傍点]……放哉その時正にあいた口がふさがらず只なるほど、北朗と云ふ男は芸術家[#「芸術家」に傍点]だなあ……と大に感心した事であつた。人間予定で動くとからだを毀すからネとは正に人を喰つた話しなれども、彼れ北朗の芸術味[#「芸術味」に傍点]は正に茲にこゝにありとつく/″\感心してしまつた。放哉と云ふ男……、一寸見るとダラシ[#「ダラシ」に傍点]の無い男のやうだが、此の予定の行動[#「予定の行動」に傍点]と云ふ事は今迄ずい分馴らされて来て居る、所謂腰弁生活の時代に、支店や出張所や代理店やの間を旅行するとき、旅館にとまると、マヅ[#「マヅ」に傍点]真つ先きに電報用紙を出して来て、昨日の店に今此の地に着いたと云ふ礼状の電報、それから明日行く店に、明日何時にその地に行くと云ふ電報之丈を打電してしまつてから扨……酒となり飯になるといふわけ……此の癖が未だに残つて居るものと見えて北朗が電報打つて
前へ
次へ
全10ページ中3ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
尾崎 放哉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング