夜
漬物石になりすまし墓のかけである
すばらしい乳房だ蚊が居る
あらしの中のばんめしにする母と子
あらしのあとの馬鹿がさかなうりにくる
足のうら洗へば白くなる
海が少し見える小さい窓一つもつ
わが顔があつた小さい鏡買うてもどる
ここから浪音きこえぬほどの海の青さの
すさまじく蚊がなく夜の痩せたからだが一つ
とんぼが淋しい机にとまりに来てくれた
なん本もマッチの棒を消し海風に話す
山に登れば淋しい村がみんな見える
雨の椿に下駄辷らしてたづねて来た
叱ればすぐ泣く児だと云つて泣かせて居る
花がいろいろ咲いてみな売られる
(花がいろいろ咲いてみんな売られる)
秋風の石が子を産む話
(秋風の石が子を産む話し)
投げ出されたやうな西瓜が太つて行く
壁の新聞の女はいつも泣いて居る
鼠にジヤガ芋をたべられて寝て居た
盆燈籠の下ひと夜を過ごし故里立つ
(盆燈籠の下ひと夜を過ごし古郷立つ)
少し病む児に金魚買うてやる
風吹く家のまはり花無し
山は海の夕陽をうけてかくすところ無し
水を呑んでは小便しに出る雑草
花火があがる空の方が町だよ
一疋の蚤をさがし
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