ては極楽であります。処が、之が皆わが井師の賜《たまもの》であるのだから、私には全く感謝の言葉が無いのであります。井師の恩に思ひ到る時に私は、きつと、妙法蓮華経観世音菩薩普門品第二十五を朗読して居るでありませう。何故なれば、どう云ふものか、私は井師の恩を思ふ時、必ず普門品を思ひ、そして此の経文を読まざるを得ぬやうになるのであります。理窟ではありません。観音経は実に絶唱す可き雄大なる一大詩篇であると思ひ信じて居ります。井師もきつと共鳴して下さる事と信じて居ります。猶、此機会に於て是非とも申させていたゞかねばならぬ事は西光寺住職杉本宥玄氏についてであります。已に此庵が西光寺の奥の院である事は前に申しました通り、私が此島に来まして同人井上一二氏を御尋ね申した時、色々な事情から大方、此島を去つて行く話になつて居りましたのです。其時、此庵を開いて私を入れて下すつたのが杉本師であります。杉本師は数年前井師が島の札所をお廻りになつた時に、井上氏と共に御同行なされた方でありまして、誠に温厚親切其のものの如き方であります。師とお話して居ますと自ら春風駘蕩たるものがあります。私は此尊敬す可き師の庇護の下に此
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