るいてゐる。
このやうにさびしく ゆふぐれとよるとのくるたびに
わたしの白薔薇の花はいきいきとおとづれてくるのです。
みどりのおびをしめて まぼろしによみがへつてくる白薔薇の花、
おまへのすがたは生きた宝石の蛇、
かつ かつ かつととほいひづめのおとをつたへるおまへのゆめ、
薔薇はまよなかの手をわたしへのばさうとして、
ぽたりぽたりちつていつた。
薔薇の誘惑
ただひとつのにほひとなつて
わたり鳥のやうにうまれてくる影のばらの花、
糸をつないで墓上《ぼじやう》の霧をひきよせる影のばらの花、
むねせまく ふしぎなふるい甕《かめ》のすがたをのこしてゆくばらのはな、
ものをいはないばらのはな、
ああ
まぼろしに人間のたましひをたべて生きてゆくばらのはな、
おまへのねばる手は雑草の笛にかくれて
あたらしいみちにくづれてゆきます。
ばらよ ばらよ
あやしい白薔薇のかぎりないこひしさよ。
悲しみの枝に咲く夢
こひびとよ、こひびとよ、
あなたの呼吸《いき》は
わたしの耳に青玉《サフイイル》の耳かざりをつけました。
わたしは耳がかゆくなりました。
こひびとよ、こひびとよ、
あなた
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