心が、はてしないささめ雪のやうにながれてゆくとき、
どこからともなく、わたしのそばへやつてきます。
かなしみにそだてられた小馬の耳は、
うゐきやう色のつゆにぬれ、
かなしみにつつまれた小馬の足は
やはらかな土壌の肌にねむつてゐる。
さうして、かなしみにさそはれる小馬のたてがみは、
おきなぐさの髪のやうにうかんでゐる。
かるいかるい、枯草のそよぎにも似る小馬のすすみは、
あの、ぱらぱらとうつ Timbale《タンバアル》 のふしのねにそぞろなみだぐむ。
森のうへの坊さん
坊さんがきたな、
くさいろのちひさなかごをさげて。
鳥のやうにとんできた。
ほんとに、まるで鴉《からす》のやうな坊さんだ、
なんかの前じらせをもつてくるやうな、ぞつとする坊さんだ。
わらつてゐるよ。
あのうすいくちびるのさきが、
わたしの心臓へささるやうな気がする。
坊さんはとんでいつた。
をんなのはだかをならべたやうな
ばかにしろくみえる森のうへに、
ひらひらと紙のやうに坊さんはとんでいつた。
草の葉を追ひかける眼
ふはふはうかんでゐる
くさのはを、
おひかけてゆくわたしのめ。
いつてみれば、そこに
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