ただよひゆくは
ゆふぐれのひかりをあびて おとづるる
汝《な》がこころの かげのこゑ


  ゆめ

いづことも わかねども
そのかたち わすれがたかり
そのいろの わすれがたかり

   *

あはあはと にほひのこれば
絶えせざる おもひはるけし


  遠く思はるる日

汝がすがた とほくして
空にうつれる葉のごとく
さびしさは わが胸に波をうがてり


  すぎし影

病めるとき
心のなかにすぎゆきし
かげともあらぬ 影のかげ

その すぎゆきしにほひをば
ひそかに ひそかに
はぐくめり


  ゆふぐれ

みぞれするかや
このゆふぐれの日に
こゑもなく
ひとびとの 行き交《か》へり


  しめらへる花

くれなゐの
花のさきけり
夜《よる》の潮《しほ》 みちくるときに
しめらひの花の
ひとつさきけり


  あをき影

あはれ あはれ
眼はとざされて みづにかくれし
なにものも みえわかず
ひとつ ひとつ あをき影あり


  しろき花

むなしき おゆびもて
まさぐれば
しろき花 ゆるるがごとし
暮れなやむ ゆふぐれのとき


  ともしびの揺れの如く

とほき影の 
前へ 次へ
全6ページ中2ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
大手 拓次 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング