きみのでていったあとで、存分《ぞんぶん》に泣けるからな。」
 お姫さまのところへ、あたらしい結婚の申し込み手がやって来たことを、もうさっそく町じゅうの人たちが知っていました。それで、たれも大きなかなしみにおそわれました。芝居は木戸をしめたままです。お菓子屋さんたちは申しあわせたように、小ぶたのお砂糖人形を黒い、喪《も》のリボンで巻きました。王さまは、お寺で坊さんたちにまじって、神さまにお祈をささげました。どこもかしこもしめっぽいことでした。それはどうせ、ヨハンネスだけに、これまでのひとたちとちがったいい目が出ようとは、たれにもおもえなかったからでした。
 その夕方、旅なかまは、大きなはちにいっぱい、くだもののお酒のポンスをこしらえて来て、それでは大いに愉快にやって、ひとつ王女殿下の健康をいわって乾杯《かんぱい》しようといいました。ところが、ヨハンネスは、コップに二はいのむと、もうすっかりねむくなって、目をあけていることができなくなり、そのままぐっすり寝込んでしまいました。旅なかまは、ヨハンネスをそっといすからだき上げて寝床に入れました。夜がふけて、そとはまっくらやみになりました。旅なか
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