、うれし涙が目のなかにあふれだしてくると、ヨハンネスは、おもわずさけばずにはいられませんでした。
「おお、ありがたい神さま、こんないいことをわたしたちにしてくださって、この世界にあるかぎりのすばらしいものを、惜しまずみせてくださいますあなたに、まごころのせっぷんをささげさせてください。」
 旅なかまも、やはり、手を組んだまま、そこに立って、あたたかなお日さまの光をあびているふもとの森や町をながめました。ちょうどそのときふと、あたまの上で、なんともめずらしく、かわいらしい声がしました。ふたりがあおむいてみると、大きいまっ白なはくちょう[#「はくちょう」に傍点]が一羽、空の上に舞っていました。そのうたう声はいかにもうつくしくて、ほかの鳥のうたうのとまるでちがっていました。でも、その歌が、だんだんによわって来たとき、鳥はがっくりうなだれました。そうして、それは、ごくものしずかに、ふたりの足もとに落ちて来ました。このうつくしい鳥は死んで、そこに横たわっているのです。
「こりゃあ、そろってみごとなつばさだ。」と、旅なかまはいいました。「どうだ、このまっ白で大きいこと、この鳥のつばさぐらいになると
前へ 次へ
全51ページ中23ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング