黷驍ヘ、西班牙《スパニア》磴《とう》の下なるペツポ[#「ペツポ」に傍線]のをぢのみにて、その「ボン、ジヨオルノ」(好日)の語は猶久しく行人の耳に響くなるべし。

   琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]洞

 千八百三十四年三月六日の事なりき。旅人あまたカプリ[#「カプリ」に二重傍線]島なるパガアニイ[#「パガアニイ」に二重傍線]が客舍の一室に集ひぬ。中にカラブリア[#「カラブリア」に二重傍線]産《うまれ》の一美人ありて、群客の目を駭《おどろか》せり。その美しき黒き瞳はこれに右手《めて》を借したる丈夫《ますらを》の面に注げり。是れララ[#「ララ」に傍線]と我となり。吾等は夫婦たること既に三年、今ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]に至る途上、再び此島に遊びて、昔日奇遇の蹟《あと》を問はんとするなり。室の一隅には、又一老婦のもろ手を幼女の肩に掛けたるあり。容貌魁偉なる一外人この幼女を愛する餘りに、覺束《おぼつか》なげなる伊太利語もてその名を問ふに、幼女は遽《にはか》に答ふべくもあらねば、老婦代りてアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]と答へつ。こはララ[#「ララ」に傍線]が生
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