cかりし時、母とマリウチア[#「マリウチア」に傍線]とに伴はれて、ネミ[#「ネミ」に二重傍線]の湖に往きしかへるさ、アンジエリカ[#「アンジエリカ」に傍線]が我に物語りし事こそあれ。その物語は今我空想に浮び來ぬ。オレワアノ[#「オレワアノ」に二重傍線]にテレザ[#「テレザ」に傍線]といふ少女ありき。戀人なるジユウゼツペ[#「ジユウゼツペ」に傍線]が山を踰《こ》えて北の國に往きしより、戀慕の念止むことなく、日を經るに從ひて痩せ衰へぬ。フルヰア[#「フルヰア」に傍線]の老媼《おうな》はテレザ[#「テレザ」に傍線]の髮とその藏め居たりしジユウゼツペ[#「ジユウゼツペ」に傍線]の髮とを銅銚《どうてう》に投じて、奇《く》しき藥艸と共に煮ること數日なりき。ジユウゼツペ[#「ジユウゼツペ」に傍線]は他郷に在りしが、我毛髮の彼銚中に入ると齊《ひと》しく、今まで忘れ居つるテレザ[#「テレザ」に傍線]の慕はしくなりて、醒めては現《うつゝ》に其聲を聞き、寢《い》ねては夢に其姿を視、そぞろに旅のやどりを立出でゝ、おうなが銚《なべ》の下に歸りぬといふ。ヱネチア[#「ヱネチア」に二重傍線]には我髮を烹《に》る銚あ
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