Nは我戀人にておはしまし候ひぬ。我戀人は、昔世の人にもてはやされし日より、今またく世の人に棄て果てられたる日まで、君より外には絶て無かりしを、聖母《マドンナ》は、現世《うつしよ》にて君と我との一つにならんを許し給はで、二人を遠ざけ給ひしにて候。君の我身を愛し給ふをば、彼の不幸なる日の夕に、彈丸《たま》のベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線][#「ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]」は底本では「ベルナドオ[#「ベルナドオ」に傍線]」]を傷けし時、君が打明け給ひしに先だちて、私は疾《と》く曉《さと》り居り候ひぬ。さるを君と我とを遠ざくべき大いなる不幸の、忽ち目前《まのあたり》に現れたるを見て、我胸は塞《ふさ》がり我舌は結ぼれ、私は面を手負《てをひ》の衣に隱しゝ隙《ひま》に、君は見えずなり給ひぬ。ベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の痍《きず》は命を隕《おと》すに及ばざりしかば、私は其治不治生不生の君が身の上なるべきをおもひて、須臾《しゆゆ》もベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]の側を離れ候はざりき。憶ふに、此時のわが振舞は君に疑はれまゐらせしことのもとにや候ふべき。私は久し
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