ノ、叱々と呼びて、この過當の褒美にあらがふもの少からず。女王はこの毀譽《きよ》を心に介せざる如く、首を昂《あ》げて場を下りしに、紳士見送りて、我等はトロヤ[#「トロヤ」に二重傍線]人なりきとつぶやきぬ。(原語「フイムス、トロエス」は猶|已矣《やみなむ》と云はんが如し。)
 代りて場に上りしは、此曲の女主人公にして、これに扮せるは二八ばかりの女《をみな》なりき。色好む男の一瞥して心を動すべき肉《しゝ》おき豐かに、目《ま》なざし燃ゆる如くなれば、喝采の聲は屋《いへ》を撼《ゆるが》せり。此時むかしの記念《かたみ》は我胸を衝いて起りぬ。羅馬の市民のアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の爲めに狂せし状《さま》はいかなりしぞ。いにしへの帝王の凱旋の儀をまねびつる、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]が車のよそほひはいかなりしぞ。わが崇拜の念はいかなりしぞ。さるを今はこの尋常《よのつね》なる容色にすらけおされ畢《をは》んぬ。あはれ、薄倖なるベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]は身病み色衰ふるに及びて君を棄てしか。さらずば、君は始より眞成《まこと》にベルナルドオ[#「ベルナルドオ」に傍線]
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