{越」、第3水準1−86−11]《なみき》の間を歩むとき、路上に襤褸《ぼろ》を纏《まと》ひたる貧人の群の草を拔くありき。われそが一人に「パオロ」銀一箇(我二十錢餘)を與へしに、姫もまた微笑みつゝ一箇を與へ給ひぬ。草拔く人は、美しき姫君と壻君《むこぎみ》とに聖母《マドンナ》の御惠あれかしと呼びたり。フランチエスカ[#「フランチエスカ」に傍線]夫人はこれを聞きて高く笑へり。われは熱血の身を焦すを覺えて、姫の面を覗ふことを敢てせざりき。われは今明に姫の我が爲めに離れ難き人となりしを覺りぬ。されど此情は嘗てアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の爲に發せしと※[#「二点しんにょう+向」、第3水準1−92−55]《はるか》に殊にて、又ララ[#「ララ」に傍線]に對して生ぜしとも同じからず。アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の才《ざえ》と色とは殆ど我をして狂せしめ、ララ[#「ララ」に傍線]の理想めきたる美は魔力を吾頭上に加へ、並に皆我をしてその人を我物にせん願を起さしめしなり。獨り小尼公《アベヂツサ》に至りては、我友情を催すこと極て深きに、われは却《かへ》りて又我慾念のこれが爲めに抑へらるゝ
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