ェへ》し見給ひしが、忽ち我面を仰ぎ視て、おん身はアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の同じ時ナポリ[#「ナポリ」に二重傍線]に在りしをば、まだ我に告げ給はざりきと宣給ふ。われはこの思ひ掛けぬ詞に、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の爭《いか》でかとつぶやきつゝ、彼新聞紙に目を注ぎつ。われは此一|枚《ひら》の紙を手にとりしこと幾度なるを知らねど、いつも評語をのみ讀みつれば、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]の事を書ける雜報あるには心付かざりしなり。
 姫の指ざし給ふ雜報には、アヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]明日登場すべしとあり。その明日といへるは即ち我が拿破里を發せし日なり。われは姫と目を見合せて、暫くはものいふこと能はざりき。既にして我は纔《わづか》に口を開き、さるにても我が再び面をあはせざりしは、せめてもの幸なりきといひぬ。姫。さは宣給へど、今其人に逢ひ給はゞいかに。定めて喜ばしと思ひ給ふならん。われ。否、われは悲しと思ふべし。そを何故といふに、わが昔崇拜せしアヌンチヤタ[#「アヌンチヤタ」に傍線]は今|亡《う》せたり、昔の理想の影は今消えぬ、わがこれを思ふは
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