辱《はづかし》めたり、我と決鬪せよといふ。其聲|極《きはめ》て冷《ひやゝか》に、極てあらゝかなりき。わが實を述べたる一語の、此の如く渠《かれ》を激せんことは、わが預期せざる所なりき。われは徐《しづ》かに、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]よ、そはよも眞面目なる詞にはあらじといひて、其手を握りしに、ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は手を引き面を背《そむ》け、舟人に陸《くが》に着けよと命ぜり。老いたる方の漕手答へて、舟を停むべきところは、さきに漕ぎ出でしところの外|絶《たえ》て無ければ、是非とも島を一周せでは叶はずといひつゝ、※[#「舟+虜」、第4水準2−85−82]《ろ》を搖《うごか》す手を急にしたり。舟は深碧の水もて繞《めぐら》されたる高き岩窟《いはや》に近づきぬ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]は杖を揮《ふる》ひて舷側の水を打てり。われは且怒り且悲みて、傍より其面を打ち目守《まも》りぬ。爾時《そのとき》年|少《わか》き漕手いと慌《あわた》だしく、龍卷(ウナ、トロムバ)と叫べり。その瞠視《みつめ》たる方を見れば、ミネルワ[#「ミネルワ」に二重傍線]の岬より起りて、斜に空に向
前へ 次へ
全674ページ中479ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング