》さしてこれに入らんとせば、帆を卸《おろ》し頭を屈するも、猶或は難からんか。柁《かぢ》取りの年|少《わか》き男のいふやう。これ魔窟なり。黄金珠玉その内にみち/\たれど、これを探らんとするものは妖火のために身を焚《や》かる。げにいふだに恐ろしき事なり。尊きルチア[#「ルチア」に傍線]よ、(サンタ、ルチア)我を護り給へといふ。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。彼妙音の女怪の一人此舟の中に來ぬこそ殘惜しけれ。その容色はいと好しとぞ聞く。さるものを待遇せんは、わが徒《ともがら》の難《かた》んぜざるところぞ。われ。おほよそ女といふ女のおん身の言に從はぬはあらざるべければ、化《け》しやうのものなりとも、其數には洩れぬなるべし。ジエンナロ[#「ジエンナロ」に傍線]。接吻し囘抱するは波濤《はたう》の常態なれば、その上に泛《うか》べるものも之に倣《なら》ふべき筈ならずや。責《せめ》ては彼アマルフイイ[#「アマルフイイ」に二重傍線]の女房をなりとも、共に載せて來べかりしものを。げに得易からぬ女なり。然《しか》おもひ給はずや。おん身も一たびは彼唇の味を試み給ひぬ。われはその人前にておとなしぶりたるを怪
前へ
次へ
全674ページ中477ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
アンデルセン ハンス・クリスチャン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング